ハイパーサーミア学会

日本ハイパーサーミア学会
37回大会
Online2020 標準治療を目指したハイパーサーミアの治療戦略

企画演題

  • 9:00

    教育講演 

    座長

    桑野 博行福岡市民病院

    • ハイパーサーミア診療の普及に向けて-ガイドラインを中心にー

      *高橋 健夫1

      埼玉医科大学総合医療センター放射線腫瘍科

      がん治療の中においてハイパーサーミアは、放射線治療や化学療法に次いで重要な役割を果たしてきた。特に放射線治療や化学療法との併用において効果を発揮し、わが国でも数多くの良好な臨床成績が報告されている。生物学ならびに物理工学面からの研究も進み、今後さらなる発展が期待される治療法である。その一方で残念ながら、わが国においては臨床試験の報告が数少なく、がん治療における標準治療としての位置づけが明確にされてこなかった。今後のハイパーサーミア治療の普及・発展を考えると、日本ハイパーサーミア学会によるガイドラインの作成が急務である。診療における普及のみならず、保険点数の問題を改善する観点からもガイドラインの意義は極めて重要である。現在、ガイドライン作成委員会委員を中心に進められているハイパーサーミア診療ガイドラインは完成目前の段階にある。ハイパーサーミア診療ガイドラインの構成は臨床11臓器(乳癌、頭頸部癌、悪性黒色腫、子宮頸癌、直腸癌、膀胱癌、軟部肉腫、食道癌、膵癌、非小細胞肺癌、腹膜播種)、物理工学(QA含む)、生物からなりCQ形式を採用している。学会初のハイパーサーミア診療ガイドラインの概要について説明しながら、ハイパーサーミア診療の標準治療について解説する。併せて今年度の診療報酬改定についても概説する。
  • 10:00-11:40

    シンポジウム エビデンスに基づくハイパーサーミア診療

    座長

    櫻井 英幸筑波大学・医学医療系、放射線腫瘍学

    • 子宮頸癌に対するハイパーサーミアのエビデンス

      *播磨 洋子1

      1. 関西医科大学総合医療センター放射線科

      局所進行子宮頸癌に対する放射線単独療法(RT)と放射線治療ハイパーサーミア併用療法(RT+HT)について6編の第III相試験が報告され、CochraneレビューではRT+HTがRTよりも腫瘍完全消失(CR)率と全生存率が有意に良好であった。HT併用により非CRになるリスクはRTの0.56倍、局所再発リスクは0.48倍、全生存率を悪化させるリスクは0.67倍でHTの有効性を示した。DattaらのメタアナリシスでRT+HTはRTよりCR率は22%、長期局所制御率は23%と有意に高かった。HTの併用で有害事象の増加を認めなかった。RT+HTはRTに比してCR率と生存率を向上させる有効で安全な治療法である。同時化学放射線療法(CCRT)とHTの併用療法(CCRT+HT)について、Westermann らは第I/II相試験で治療結果を報告し、CR率、5年全生存率、5年無再発生存率は90%、66.1%、57.5%であった。Harimaらの多施設第III相試験でCCRT+HTのCR率、5年全生存率、5年無病生存率が88%、77.8%、70.8%で、CCRTでは77.6%、64.8%、60.6%であったので、HTの治療効果は良好であった。WangらのCCRTとCCRT+HTを比較した単施設第III相試験でHT併用群の5年全生存率は有意に良好であった。CCRT+HTは有望な治療法と考えられる。
    • 胸部腫瘍のハイパーサーミアのエビデンス

      *大栗 隆行1

      1. 産業医科大学病院放射線治療科

      進行肺癌は難治性であり集学的治療が行われる。放射線治療や細胞傷害性抗癌剤に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の有効性が示され治療方針の個別化が進んでいる。胸部領域への深部外部加温は、大型対電極を用いるCapacitive typeの加温装置では施行可能であるが、欧米で普及している環状アプリケータを用いる装置では部位的に施行が困難である。Capacitive typeはアジアを中心に普及しており、胸部腫瘍に対する臨床実績は世界的には限られている。肺癌に対するハイパーサーミアは、普及当初に腫瘍内温度の測温が可能な胸壁浸潤型を中心に放射線治療との併用で施行され、41℃台の腫瘍内の平均温度上昇が達成されている。腫瘍温度上昇と腫瘍縮小との有意な関連が示されている。腫瘍温度の直接評価が困難な症例では、食道腔内温度で治療効果を予測可能である点が示されている。2007年に、やや小規模ではあるもののランダム化比較試験により局所進行肺癌に対して放射線治療にハイパーサーミアを加えるメリットの検証がなされ、局所制御率の有意な改善が示されている。また、初回治療後の2次治療として行う細胞傷害性抗癌剤にハイパーサーミアを加えた第2相試験の有望な成績が複数報告されている。本発表では、肺癌を中心に胸部領域のハイパーサーミアのエビデンスを概説し、今後の展望も含め述べたい。
    • 体腔内温熱化学療法:HIPECのエビデンス

      *片山寛次1、鍛利幸2、森川充洋3、五井孝憲3、渡邉享平4

      1.つくし野病院、さくら病院、2.岸和田市民病院外科、3.福井大学医学部 第一外科、4.福井大学病院 医学研究支援センター

      腹膜播種に対しては、減量手術(CRS)と腹腔内温熱化学療法(HIPEC)併用が広く行われる。CRS+HIPECは、全身化学療法と比べ予後を著しく改善したが、HIPECの有用性の検証が行われている。 ○大腸がん:CRS+HIPECは化学療法に比べて有意に生存率を改善する。PCIの低い症例ではHIPEC併用群で予後を改善した。しかし、再発予防効果は未定。 ○腹膜偽粘液腫:完全切除の有無は最大の予後因子だが不完全切除でもCRS+HIPECは予後を延長する。病理分類により予後は異なる。2298例を集計した結果は、全生存期間196カ月、無再発生存期間98カ月と優れた成績が示され、多変量解析では、HIPECは無再発生存の独立予後因子だった。 ○胃がん: CRSあるいは化学療法単独と比較して、1年生存でのみ有意差を認めた。鏡視下HIPECなどが試みられる。予防的では、3年、5年生存に有意差を認めたが、有害事象が多かった。 ○卵巣がん:再発stage ⅢC/Ⅳ症で、再切除+全身化学療法後全生存期間はHIPEC群で26.7カ月、非HIPEC群で13.4カ月と有意差を認めた。また、初発stage Ⅲで、化学療法後CRSで完全切除症例では、HIPEC併用群で無再発生存、全生存でも有意差を認めた。 ○その他、腹膜中皮腫、小腸癌、肺がんの胸膜播種などいずれもCRS+HIPECが予後を改善する可能性が示されたが今後の症例集積が必要。 考察: CRS+HIPECは多くの国で標準治療として高い効果を挙げているが、HIPECの意義については、議論が多い。①使用製剤が雑多である。②温熱療法と言いながら温度測定が行われていないか41-42℃と低い。温熱化学療法の効果を検証するためには加温法の標準化が必要である。
    • Systematic review for clinical hyperthermia

      Niloy Datta

      Kantonsspital Asrau, Radio-Onkologie,

  • 11:40-12:10

    企業共催企画

    座長

    古倉 聡京都先端科学大学健康医療学部

    • 難治性がんに対する温熱併用療法 -播種性腫瘍と下部直腸がんの治療戦略-

      浅尾 高行

      群馬大学数理データ科学教育研究センター

       難治性腫瘍をターゲットとした治療法の開発が進められているが、有効な成果が得られていないのが現状である。群馬大学総合外科学では腫瘍放射線学との非臨床および臨床研究においてハイパーサーミアを加えた共同研究を長年にわたり行ってきた。ここでは腹膜播種性転移を有する胃癌と下部進行直腸がんに対する温熱療法を併用した治療戦略を紹介する。 <方法>  1. 腹膜播種を有する胃がんに対する温熱併用療法  原発巣の切除後2週間後にシスプラチンの腹腔内投与とRF-8(山本ビニター)による60分間の体外加温を行った。 2. 下部進行直腸癌における温熱併用放射線化学療法  2004年より段階的に治療容量を増加させ、5週間で50Gyの小骨盤に限局した照射、照射に合わせた経口5FU剤の内服、対外加温による5回の温熱療法を標準療法とした。温熱療法は初回に設定出力を決定し、2回目からは最初から設定した出力で開始する工夫をした。 <結果> 1. 腹膜播種陽性胃がんにおけるFeasibility Study   10例のうちGrade 3のNauseaが認められたがそれ以外は有害事象は見られなかった。胃切除のみを行った10例との比較では、温熱併用群で3年生存率36%(対照群 0%)が得られた。 2. 直腸癌に対する温熱併用療法   51例でのPathological CR Rateは27%、Clinical CRは54%であった。著効が得られた症例のうち根治手術拒否例に行った経肛門的局所切除16例の結果は、pCRが10例であった。局所再発はなかったが3例が肺転移1例がリンパ節転移で再発した。  <結語>   難治性がんの併用治療として副作用の少ない温熱療法は高齢者や全身状態不良でも併用しやすく、治療戦略に含める価値の高い治療選択肢と考えられた。
  • 12:10-12:50

    学会活動報告

    座長

    古倉 聡京都先端科学大学健康医療学部

  • 13:00-13:15

    学会賞受賞講演

    座長

    大塚 健三中部大学応用生物学部

    • 学会賞受賞講演 深部領域加温の最適化とThermal doseの重要性

      *大栗 隆行1

      1. 産業医科大学病院放射線治療科

      がんに対して39~45℃の温度を用いる温熱療法は直接的な殺細胞効果、放射線治療や抗がん剤の効果を増感することが基礎研究において広く証明されている。腫瘍の温度上昇を得やすい浅部のがんでは、普及当初より放射線治療との併用で局所効果の改善が臨床試験で示されている。しかしながら、温熱療法が広く普及しない理由は以下の2点に集約されると考えている。1) 多くの癌が存在する深部領域への加温集中性が不良である点、2) 腫瘍温度と加温時間から算出されるThermal doseの客観性が低い点である。我々は深部加温の加温集中性の向上に関連する研究として、皮下脂肪の過熱を軽減するための外部冷却装置の開発、ボーラス内容液の電気伝導性の最適化、また電極とボーラス間への絶縁体挿入・経時回転法の開発、さらに皮下脂肪の薄い部位への電気伝導性物質の設置による深部腫瘍の温度上昇の最適化を行った。またThermal doseの研究として、骨盤内腫瘍や肺癌の温熱放射線治療に関する加温データを用い直腸・食道腔内または腫瘍内温度、加温出力と局所効果の関連性を明らかにし、Thermal doseの臨床的重要性を確認した。さらに近年、実現可能となった高精度な電磁界シミュレーションにより深部領域の加温集中性やThermal doseの信頼性を担保し、がん集学的治療の中での温熱療法の貢献をより科学的に探索する試みを行ってきたので紹介する。
  • 13:15-13:30

    優秀論文賞受賞講演

    座長

    高橋 昭久群馬大学重粒子線医学研究センター

    • 非接触ハイパーサーミア治療を目的とした矩形型空胴共振器アプリケータの加温特性

      市島泰人1、新 藤 康 弘2、井 関 祐 也3、加 藤 和 夫4

      1.明治大学大学院理工学研究科、2.東洋大学理工学部機械工学科、3.八戸工業高等専門学校機械システムデザインコース、4.明治大学理工学部機械情報工学科

      要   旨: 著者らは,これまでに円筒形状の空胴共振器を用いた非接触型の加温装置を提案している. 有限要素法による数値解析,この数値解析結果に基づく加温システムを試作し,寒天ファントムおよび 動物の加温実験を通して,その有効性を実証してきた.しかしながら,これまでに提案した円筒型空胴 共振器を用いて人体腹部の深部腫瘍を加温しようとした場合,空胴共振器内に収まっている目的部位以 外の領域をも加温する危険性が確認されていた.本研究では,これまでの円筒型空胴共振器アプリ ケータの欠点を補うために,矩形状の空胴共振器を用いた矩形型空胴共振器アプリケータを提案してい る.アプリケータ形状を矩形状に改良することによって,共振器内に収まる人体の範囲は少なくなり, そのため目的部位近傍のみを加温できる可能性があると考えられる.本論文では,試作した矩形型空胴 共振器加温システムを用いて,人体形状寒天ファントムを加温した結果を示し,本手法の有用性を明ら かにする.まず,有限要素法を用いた数値解析から矩形型空胴共振器の形状および寸法を決定した.試 作した矩形型空胴共振器は高さ:60 cm,横幅:70 cm,厚さ:20 cm の矩形状である.本試作加温シス テムは,矩形型空胴共振器,空胴共振器内に電磁波を励振するためのアンテナ,共振周波数の自動探索 および自動インピーダンス整合機能を有するパワーゼネレータから構成されている.次に,本加温シス テムを用いて,加温時間 30 分,加温電力 50 W とし,人体形状寒天ファントムを対象とした加温実験 を実施した.そして,加温直後の寒天中央断面での赤外線サーモ画像から,人体形状寒天ファントムの 加温ターゲットとした領域が集中的に加温されており,最高温度上昇値は 5℃程度であることが分かっ た.また,他の領域にホットスポットは発生していないことを確認した.これらの結果から,本加温シ ステムを用いることで,矩形状の空胴共振器内に収まった人体深部領域を非接触状態で,局所的に有効 加温し,それ以外の領域は異常加温されず,安全かつ効果的に加温治療できる可能性を示した.
  • 13:30-14:00

    研究奨励賞受賞研究報告

    座長

    大塚 健三中部大学応用生物学部

    • 温熱による細胞周期に依存した開始tRNA分解を介した翻訳抑制機構の解明

      *渡邉 和則1

      1. 岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科

      【背景】生物は温熱に曝されると、ヒートショックプロテインの発現上昇や翻訳抑制などのストレス応答を示すことでストレスに抵抗する。我々はストレス応答機構の1つとして、RNA分解酵素Xrn1/2による開始tRNA特異的な分解促進を介した温熱による翻訳抑制機構を報告している。また、温熱による細胞死は細胞周期に依存していることが報告されている。これらのことから、細胞周期依存的に開始tRNA分解を介した翻訳抑制機構が働くことで、温熱による細胞周期依存的な細胞死に関与しているのかもしれない。【目的】本研究では、まず細胞周期依存的に開始tRNA分解が起こることで、細胞周期依存的な翻訳抑制が起こっているのか明らかにすることを目的とした。【方法】H1299細胞を45.5˚Cで5分間温熱ストレスを与えた後、通常培養条件に戻すことで細胞周期を同調した。細胞周期を同調後、さらに温熱ストレスを60分間与えることで、開始tRNAの分解・翻訳活性への影響、翻訳因子であるeIF2α, 4EBP, S6Kの活性を検証した。【結果】開始tRNAの分解はG2/M期で最も抑制されており、翻訳活性も高かった。一方、翻訳因子であるeIF2α, 4EBP, S6Kの活性は細胞周期に依存していなかった。これらのことから、細胞周期依存的な翻訳抑制は開始tRNAの分解により制御されていることが明らかになった。
    • 温熱により誘導されるBAG3のがんにおける機能の解明

      *柚木 達也1

      1. 富山大学眼科

      目的 HSP70のコシャペロンであるBAG3は、ストレス誘導性の抗アポトーシスタンパク質である。今回、ヒトがん細胞を用いて、温熱誘導細胞死におけるBAG3の分子メカニズムを検討した。方法 ヒト口腔扁平上皮がんHSC-3とヒト子宮頸がんHeLa細胞を用い、細胞を44℃90分間の温熱負荷を行った。BAG3の機能阻害の方法として、siRNAによるノックダウンと、CRISPR/Cas9法によるノックアウト細胞を構築した。また、レンチウイルス発現システムを用いてBAG3を高発現させた。さらに、BAG3ノックダウンによる温熱感受性増強に関与する遺伝子をGeneChipシステムを用いて、網羅的発現解析を行った。結果・考察 BAG3の機能阻害は、温熱誘導細胞死を有意に上昇させ、一方、BAG3の高発現はこの温熱誘導細胞死を有意に低下させた。また、網羅的遺伝子発現解析の結果から、BAG3ノックダウンはERストレスやオートファジーに関与する遺伝子の発現を増加させた。さらに、細胞死を抑制に関与する遺伝子ネットワークにおいて、BAG3やHSP70 を含む多くのHSPファミリーが含まれ、BAG3とこれらのタンパク質との相互作用がBAG3の発現に寄与していると考えられた。BAG3は温熱負荷に対して保護的に機能し、その機能阻害はがん温熱療法における新規の治療戦略になる可能性がある。
  • 14:00-15:30

    ハイパーサーミアに関する最近の話題

    座長

    大塚 健三中部大学応用生物学部

    近藤 隆富山大学医学部放射線腫瘍学

    • エピシャペロームを標的としたがん治療の基礎的研究

      *大塚 健三1

      1. 中部大学応用生物学部

      熱ショックやさまざまなストレスで誘導される熱ショックタンパク質(heat shock proteins、HSPs)は、分子シャペロン(molecular chaperone)としてタンパク質の折りたたみを含むさまざまな細胞機能を制御している。またHSPsは細胞内のタンパク質の品質管理を行うことでタンパク質恒常性を維持し、細胞の正常な機能を保つことで生存に寄与している。分子シャペロンにはHSP90やHSP70などシャペロン機能を持つもののほか、それらを補助するコシャペロン(co-chaperone)と呼ばれる多くのメンバーがあり、これらをまとめてシャペローム(chaperome)と呼ぶことが提案されている。 また最近、多くのがん細胞では正常細胞には見られない特別なシャペロン複合体(HSP90をはじめ多くのシャペロームメンバーを含む)が形成されることがわかり、この複合体はエピシャペローム(epichaperome)と名付けられている。がん細胞をHSP90阻害剤で処理するとエピシャペロームは解離し、アポトーシスが誘導されて細胞の増殖が抑制される。がん細胞の生存や増殖はこのエピシャペロームに依存しているので、エピシャペロームを標的としたがん治療の試みについて紹介したい。
    • Hikeshiを標的としたがん温熱療法の可能性

      *田渕 圭章1

      1. 富山大学

      腫瘍に対してがん温熱療法 (HT) を適応した時,熱ストレス応答が起こり,シャペロン機能を有する熱ショックタンパク質群 (HSPs) の発現が誘導される.HSPsの中でHsp70は,様々なストレス刺激に対して細胞保護作用を示し,温熱抵抗性獲得に重要な役割を演じている.細胞へHTを負荷した時,Hsp70は速やかに細胞質から核へ移行する.2012年,Koseら1)によりHsp70の核移行のキャリアタンパク質としてHikeshiが同定された.Hikeshiの発現抑制は,がん細胞のHTに対する感受性を上昇させた1-3).また,Hikeshiはヒトの胃がん2)や腎がん4)で高発現していることが報告されている. 本ワークショップでは,Hikeshiの生理や病理機能を要約し,さらに、そのHT治療のターゲット分子になる可能性について述べる.参考文献:1) Kose S et al. Cell, 149: 578-589, 2012. 2) Yanoma T et al. Oncol Rep, 38: 1500-1506, 2017. 3) Tabuchi Y et al. Int J Mol Med, 46: 58-66, 2020. 4) Bhalla S et al. Sci Rep 7: 44997, 2017.
    • 磁性ナノ粒子を用いたハイパーサーミア -基礎研究の新展開

      *井藤 彰1、金子 真大1

      1. 名古屋大学大学院工学研究科

      磁性ナノ粒子を用いたハイパーサーミア(磁気温熱療法)は、交流磁場を照射することで磁性ナノ粒子を腫瘍組織内で発熱させる治療法である。磁気温熱療法の臨床における有効性も明らかになってきた一方で、その適用は磁性ナノ粒子の局所投与可能な体表に近い癌に限られている。血中投与でハイパーサーミアが可能な磁性ナノ粒子が開発されれば、体内にある多くの癌にも適用できるが、その技術的なボトルネックはDDSにある。一方で、巨視的には温度上昇がなくても、腫瘍内あるいは癌細胞内における微小環境での発熱で細胞死が誘導されて治療効果が得られるとの報告がなされ、注目されている。これらの場合、巨視的な温度上昇が見られなくても細胞死が誘導されることから、細胞あるいは細胞内小器官における磁性ナノ粒子の局所的なハイパーサーミアが効果的であることが示唆される。その場合、血中投与での磁性ナノ粒子の腫瘍送達量に限界があったとしても、例えばオルガネラ特異的な磁性ナノ粒子の開発によって、癌細胞の急所を突くことでハイパーサーミアの治療効果を補える可能性がある。さらに、最近、磁性ナノ粒子が交流磁場だけでなく、近赤外線レーザーでも加温されることが分かってきた。本講演では、最近の磁気温熱療法の基礎研究の動向について述べる。
    • 温熱治療のさらなる増感効果を目指した研究について

      *横堀 武彦1、浅尾 高行2

      1. 群馬大学未来先端研究機構、2. 群馬大学数理データ科学教育研究センター

      ヒートショックタンパク (heat shock proteins: HSPs)は細胞ストレスによる障害から回復するための分子シャペロンとして機能する重要なタンパク質である。HSPs発現は癌進行、患者予後とも関連しており、HSPsの温熱誘導性、発現量の増減に注目した研究はこれまで多くなされているが、その細胞内局在の意義に注目した研究は少ない。これまでの検討から、HSPsは温熱刺激によるDNAダメージを回避するために核内に移行し、そのシャペロン機能によるDNAに対して保護的に機能することが知られている。本研究では腫瘍細胞でのHSP細胞内局在を制御するインポーチン蛋白とHIKESHI蛋白に着目し、癌臨床検体におけるこれらの蛋白の発現意義並びに細胞株における機能解析データを提示する。
    • 泌尿器系癌に対するハイパーサーミアを用いた治療戦略

      *河合 憲康1

      1. 名古屋市立大学大学院医学研究科 腎・泌尿器科学分野

      本邦においてハイパーサーミアといえば8MHzラジオ波加温装置による治療である。しかし、ハイパーサーミアは加温装置や対象臓器より、Ablation, Local hyperthermia, Regional hyperthermia, Whole-body hyperthermia, Cryotherapyに分類される。AblationやCryosurgeryは小径腎癌に保険適応となっている。6年前に日本泌尿器癌局所療法研究会が発足し、小径腎癌に対するAblation, Cryosurgeryに対し活発に議論されている。さらにAblationとしての高密度焦点式超音波療法(HIFU)が限局性前立腺癌に対し、本邦では先進医療で実施されている。非筋層浸潤性膀胱癌(NMIBT)は、術後再発予防にBCGの膀胱内注入が基本であるが、副作用が強いことが欠点である。経尿道的超音波発生アプリケーターで膀胱壁を加温し、さらに加温したMMCを膀胱内へ注入する方法(HIVEC)がある。HIVECはヨーロッパ泌尿器科学会でNMIBTに対する治療法として推奨されている。前立腺癌に対しては金ナノ粒子や磁性ナノ粒子を用いた治療の臨床試験が実施されている。世界の情報も元にして泌尿器系癌に対するハイパーサーミアを用いた治療戦略について考えたい。
    • 最近の温熱を利用した治療法の発展について

      *近藤 隆1

      1. 富山大学医学部放射線腫瘍学

      温熱を利用した治療法は、いわゆるハイパーサーミアが有名であるが、最近、その利用は多方面へと拡大している。本講演では、学会の学術報告で取り上げた新規の温熱を用いた治療法について概説する。気管支サーモプラスティ、リアルタイムMRIガイド下経直腸および経尿道的集束超音波治療、磁気共鳴画像ガイド下レーザー組織内温熱療法、ハイパーサーミア同時併用スポットスキャニング陽子線治療、温熱光線力学治療、MR-HIFUのマイルドハイパーサーミア治療への利用、Modulated-electro hyperthermiaなどである。特にMRIを用いることでリアルタイムに温度測定ができ、目的部位のサーマルドーズの計測が可能となってきた。今後、さらに診断技術との融合が進み、精緻な加温治療へと発展することが期待される。
  • 14:00-15:15

    加温状況の予測・実測・評価の最新技術

    座長

    黒田 輝東海大学情報理工学部情報科学科、千葉大学フロンティア医工学センター

    加藤 和夫明治大学理工学部機械情報工学科

    • 計算結果に基づく医療機器周辺の電磁波可視化システムの開発

      *新藤 康弘1、加藤 和夫2、大沼 大3

      1. 東洋大学理工学部、2. 明治大学理工学部、3. 東洋大学大学院

      電磁波を応用したハイパーサーミア装置をはじめとする医療機器の周辺には、漏えい電界が発生している可能性がある。また一方で、作業療法士や医師を含む医療従事者にはICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の電磁界曝露ガイドラインで定められた電磁波曝露限界指数が存在するため、この限界領域を十分に認識する必要があるといえる。 そこで本研究では、時間領域差分法(FDTD法)による数値解析結果に基づく、医療装置周辺の電界曝露領域をWEBカメラで撮影している画面上に重ね合わせて表示することで、医療従事者が限界領域を視覚的に認識できる簡便なVRシステムの開発を目的としている。 具体的に本研究では、まず、温熱リハビリテーションで用いられている極超短波治療装置(2.45GHz)周辺の漏えい電界をFDTD法に基づく数値解析を実施した。次に、この解析結果において、ICNIRPで定められた電磁界曝露限界領域を抽出し,解析結果で得られた限界領域を三次元モデル化した。最後に、AR技術を用いて、撮影している画面上に解析結果を投影するシステムの開発を行った。 実験では実際に計測した漏えい電界強度と数値解析結果とを比較検討し、本システムの有用性を数値的に確認した。本研究成果により、開発したシステムを用いることで、医療機器周辺の漏えい電界を簡易的に可視化することができ、臨床作業時の一助となると考えられる。
    • Laser Induced Thermal Therapyを使いやすくする数値シミュレーション

      鷲尾 利克

      国立研究開発法人産業技術総合研究所

    • アブレーションデバイスの性能評価用の2.45 GHz透明筋肉ファントム

      *アディチャ ラクマディ1、齊藤 一幸1

      1. 千葉大学

      Various tissue equivalent phantom which simulates electrical characteristics equivalent have been developed and used to quantitively and qualitatively measure the interaction between electromagnetic field and biological body. Phantom is very useful for evaluating hyperthermia and ablation devices performance and temperature distribution. In this research, we produce a transparent tissue equivalent phantom for performance evaluation of microwave ablation (MWA) catheter ablation device. This phantom dielectric property mimics a human muscle dielectric property at 2.45 GHz.The phantom is a water-based phantom, produced using ionized water, gellan gum, and silicone oil. The reference for this phantom relative permittivity (εr) is 52.7, and electrical conductivity (σ) is 1.74 S/m at frequency of 2.45 GHz. The dielectric property is adjusted by changing the ratio of silicone oil. After the dielectric property is matched with references, the thermal property and material density is measured. Using this transparent phantom, it is easier to place the thermometer probe at a certain position accurately and measure the area of temperature distribution using multiple probes of fiber optic thermometer.
    • 深部加温と無侵襲温度計測の可能性

      *加藤 和夫1

      1. 明治大学理工学部機械情報工学科

      著者等は、3次元温度計測機能を有する2種類の無侵襲深部加温システムの開発に取り組んでいる。本加温システムの3次元温度計測機能は、USB接続で画像取得が可能な超音波プローブを応用した手法である。まず、この温度計測機能と目的部位を省電力かつ集中的に加温可能な矩形状空胴共振器アプリケータとで構成されている「非接触型加温システム」を試作した。本システムの特長は、(1)安価な超音波プローブ(あるいは超音波画像診断装置)を用いた温度計測、(2)目的部位を含む領域のみを加温対象とした矩形空胴共振器アプリケータ、(3)システム全体を容易に移動(持ち運び)可能、などである。さらに、臨床において広く用いられている「RF容量結合型加温方式」に超音波温度計測機能を搭載した小型のRF加温システムを試作し、電極形状、加温周波数に関する検討を進めている。本講演では、上記2種類の「超音波温度計測機能を有する加温システム」の概要、および寒天ファントム加温時の加温特性の評価結果を述べる。
    • 前立腺がんのRF誘電加温におけるMR温度計測に関する基礎検討

      丁 海嵩1、大栗 隆行2、関口 哲也3、野村 哲司3、*黒田 輝1,4

      1. 東海大学情報理工学部情報科学科、2. 産業医科大学病院放射線治療科、3. 山本ビニター株式会社、4. 千葉大学フロンティア医工学センター

      【目的】RF誘電加温の制御にMRによる非侵襲温度計測が有効であると考えられるが,大直径(〜30cm)の加温電極板による勾配及びRF磁場の遮蔽により,撮像は著しく阻害される.そこで本研究では,患者を加温電極から解放して撮像することを想定し,組織の変位・変形の影響を低減するための,内部基準を用いた磁気共鳴分光法に基づく技術を提案する.前立腺がんに的を絞り,組織に含有されるクエン酸,コリン及びクレアチンの信号を内部基準として水信号の共鳴周波数から温度変化を測定するための基礎検討を行った.【方法】9.4 Tの小動物用MRI装置に,100mMのクエン酸水溶液ファントム(直径25 mm・高さ55 mm)を置いた.湯煎により約55 oCまで加温し,冷却過程においてPoint Resolved Spectroscopy (PRESS)法によりプロトン磁気共鳴スペクトルを得た.スペクトル帯域幅は4 kHz(10 ppm),測定点数は2048点とした.各温度点においてまず水抑制をかけてクエン酸信号を,次に水抑制をせずに水信号を得て,両信号の周波数差(化学シフト)を測定した.【結果】クエン酸と水の間の化学シフトは温度に対して-0.00845 ppm/oCの係数で線形に変化した(相関係数-0.992).【結論】内部基準を用いた磁気共鳴分光画像化法による前立腺温度の非侵襲計測の基礎技術を示した.
  • 15:15-16:15

    播種に対するCRSとHIPECの効果

    座長

    米村 豊岸和田徳州会病院 腹膜播種センター

    片山 寛次つくし野病院、さくら病院

    • 腹膜播種に対するCRS + HIPEC の世界の潮流

      米村 豊

    • 大腸癌腹膜播種および虫垂原発腹膜偽粘液腫に対する高温度腹腔内温熱化学療法

      *森川 充洋1、田海 統之1、成瀬 貴之1、呉林 秀崇1、澤井 利次1、小練 研司1、玉木 雅人1、村上 真1、廣野 靖夫2、片山 寛次1、五井 孝憲1

      1. 福井大学第一外科、2. 福井大学がん診療推進センター

      腫瘍減量手術(CRS)+腹腔内温熱療法(HIPEC)の温度、加温時間に統一した見解はない.当科では、CRSは臓器温存を目的にCC1までは容認し,反面42.5-44℃の高温度のHIPECを施行しており、治療方法・成績について報告する.温度は腹腔内2か所(横隔膜下、ダグラス窩)、体温2か所、灌流液の流入温・流出温、恒温槽温を測定し厳密な管理を行う.恒温槽を約60℃、流入温を約50℃で灌流することで、深部の腹腔内温を42.5-44℃に保つことができる.経時的に腹腔温から43℃に換算した加温時間(Thermal dose)を計算し加温時間を決定する.術後は腹腔内の熱傷にて循環血液量減少性ショックになりやすく、基礎輸液以外に等張電解質輸液を約2日間は250ml/h前後で投与し、尿量が得られた時点で減量する.そのため、術後は10kg前後の体重増加を認め、利尿期に入り浮腫が軽減するまで人工呼吸管理を行う.2020年3月までに大腸癌腹膜播種(CRC)56例、腹膜偽粘液腫(PMP)35例にCRS+HIPECを施行した.5年生存率はCRCのP1+2(15例)が75%、P3(41例)が30%、PMPは80%であった.合併症発症率(CD分類Ⅲ以上)はCRC16%、PMP11%で、死亡例は認めなった.当科における高温度HIPECは、臓器温存によるQOLを維持したうえで、良好な成績を提供し得ると考える.
    • 婦人科進行癌に対するHIPEC~当科での現況と展望~

      *黒川哲司1、井上大輔1、大沼利通1、津吉秀昭1、品川明子1、知野陽子1、片山寛次2、吉田好雄1

      1.福井大学 産科婦人科 2.つくし野病院

      婦人科癌の中でも腹膜播種を伴う卵巣癌は予後不良で、治療成績向上が重要な課題となっている。現在の卵巣癌の治療は、分子標的治療剤が注目されており、いくつかの興味深い臨床試験が行われている。分子標的治療剤以外では、HIPECが注目されてきている。そのきっかけとなった論文は、2018年にオランダからNew England Journal Medicine に報告されたものである。内容は、進行卵巣がんにおいて、CRS(cytoreductive surgery)+HIPECが、CRSのみと比較して、良好な生存率を得たというものであった。さらに、その報告以来、「どのような症例に効果を示すか」や「再発症例ではどうか」などの臨床試験が、いろいろな国で行われてきている。そこで本ワークショップでは、卵巣癌に対し世界から報告されているHIPECの治療効果に加え、当院で行ったHIPECの治療経験を報告する。さらに、HIPECの具体的な方法と効果が報告されているにも関わらず国内でHIPECが拡がらない理由についても考察する。
    • HIPECのエビデンスと実施における問題点について

      *片山寛次1、鍛利幸2、森川充洋3、五井孝憲3、渡邉享平4

      1.つくし野病院、さくら病院、2.岸和田市民病院外科、3.福井大学医学部 第一外科、4.福井大学病院 医学研究支援センター

      腹膜播種に対するCRS+HIPECは、欧州を中心に広く行われているが、我が国では、臨床研究法により実施困難で、保険診療認可には診療ガイドラインへの収載が必要である。 その成績は、標準的全身化学療法と比較し著しい改善を得た。エビデンスを示す。CRS+HIPECは化学療法に比べて有意に生存率を改善する。Peritoneal cancer index (PCI)による進行度の低い症例では手術単独群よりもHIPECの併用群で予後を改善した。しかし、再発予防効果は見いだせなかった。 ○腹膜偽粘液腫:完全切除の有無は最大の予後因子であるが、不完全切除でもHIPECは予後延長に有効。病理分類により予後は異なる。16の専門施設における2298例のデータを集計した結果では、全生存期間196カ月、無再発生存期間98カ月と優れた成績が示された。 考察: CRS+HIPECは高い効果を挙げているが、①使用製剤が雑多で、②温度測定が無いか、41-42℃と低く、今後加温法の標準化が必要である。 実施に向けて:「研究」としては「特定臨床研究」に該当し今後実施は困難。「診療」なら、特定機能病院では、医療法に従い「未承認新規医薬品等評価委員会」の承認(医療安全面からの対応)が求められる。当然初めて実施する場合は「高難度新規医療技術評価委員会」の承認も必要である。特定機能病院以外では「努力義務」として、施設の状況に応じ対応する。